この記事では、海外を中心に市場規模が拡大しているAI動画広告の基礎知識について順番に整理しています。
AI動画広告とは
AI動画広告には厳密な定義はありません。ここでは形式的に、Amazon Adsによる説明を用います。
彼らによると、AI動画生成ツールは
「入力内容やアセットから動画を自動的に作成・編集するツール」
と説明されています。
これを直感的に分かる言葉にすると、商品情報から広告掲載用の動画を数分で制作する仕組みのように言い換えることができます。
AI動画広告では、映像を生成するAIだけではなく、広告台本を作るAIや音声合成などもサービスに含まれます。
なぜAI動画広告の市場は拡大しているのか
近年、TikTokやYouTube Shortsなどの短尺動画が広く利用されるようになる中、動画広告そのものの需要が拡大しています。動画広告に関する需要の動向として、以下のような記事があります。
電通など4社による「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」では、2025年の国内ビデオ(動画)広告費は1兆275億円となり、推定開始以降初めて1兆円を突破しました。前年比は121.8%で、2026年には1兆1,783億円まで拡大すると予測されています。
このように動画広告の需要が増えている中、広告投稿者には「より多くの動画を、より短期間で、ターゲットごとに作り分けたい」という要求が生まれます。しかし、従来の動画制作には撮影、出演者、編集などのコストと時間が必要であり、需要とのギャップが生まれています。
このギャップを解決するための技術としてAI動画広告が注目されています。AI動画広告を使うと、従来より制作コストや時間を抑えながら、複数パターンの動画広告を作ることができます。
以下に、AI動画広告に大企業が参入した例を載せます。
サイバーエージェントは2025年、生成AIを全面的に活用した 動画制作組織を設立し、従来1本数千万円、約3か月としていた ブランド動画制作に対し、3本300万円、1.5〜2週間で制作する パッケージを発表しました。
このように、動画広告市場が拡大する中で、大手広告会社も生成AIを前提とした制作体制を整え始めています。AI動画広告は、単なる実験的な技術ではなく、実際の広告制作に使われる選択肢の一つになりつつあります。
AI動画生成とAI動画広告の違い
AI動画広告を理解するうえで、動画生成AIとの違いは非常に重要です。
大前提、Soraに代表される汎用的な動画生成AIを使って広告素材を作ることもできますが、両者にはAIが担当する範囲に違いがあります。
この下に一般的な動画生成AIとAI動画広告ツールの比較を載せます。
| 比較項目 | 一般的な動画生成AI | AI動画広告ツール |
|---|---|---|
| 主な目的 | 動画そのものを生成する | 広告動画を制作・量産・改善する |
| 主な生成物 | 映像 | 台本・映像・字幕などを含む広告 |
この表を見ると、AI動画広告ツールは、映像だけでなく広告制作で必要な台本なども生成できると分かります。
このように、AI動画生成とAI動画広告の主な違いは、映像だけを生成するのか、映像以外の広告制作工程までAIが担うのかという点です。
また、AI動画広告ツールの中には、A/Bテストのように広告の効果を検証する機能を備えたものもあり、単に動画を生成するだけでなく、その後の改善までサポートできる点も強みです。
AI動画広告では実際にどんな広告が作れるのか
ここまでAI動画広告の仕組みを説明してきましたが、実際の広告を見る方がイメージしやすいでしょう。
まず、動画生成AIそのものを広告制作に使った例として、Toys“R”Usが2024年に公開したブランドフィルムがあります。
Toys“R”Usによると、このブランドフィルムはOpenAIの動画生成AI「Sora」を使って、映像のほぼ全編が制作されています。一部ではVFXによる補正や、人間が制作した音楽も使われています。
出典:Toys“R”Us「The Origin of Toys“R”Us」
このように、一般的な動画生成AIでも広告に使う映像そのものを作ることはできます。
しかし、この広告を作成するまでには、台本を考えるといった工程は別で行う必要があります。
広告を1本生成するだけならまだしも、複数本の広告を作成し、さらにそれらをテストしていく工程を考えると、人間の負担は大きくなっていきます。
一方、現在のAI動画広告ツールは、映像を生成するだけではありません。
例えばAI動画広告ツールのCreatifyでは、商品ページのURLを入力すると、商品ページから商品名や説明、画像などを取得し、広告用のスクリプトを生成したうえで、短尺の動画広告まで作成できます。
下の動画では、実際に制作された動画が最も見やすかった3:38から再生されるようにしてあります。作成の過程まで興味がある方は最初から再生してみてください。
出典:Creatify「Create Video from URL」
このように、CreatifyのようなAI動画広告ツールでは、映像生成以外の広告制作工程までAIに任せることができます。
AI動画広告の現在の課題・注意点
AI動画広告には制作速度や量産性という大きな利点がありますが、2026年現在も解決していない課題があります。
AIっぽさや不自然な動きはまだ課題になる
動画生成AIは急速に進歩していますが、人物の動作、表情、商品の形状などが不自然になるケースは残っています。
上で紹介したCreatifyの生成動画でも、商品に違和感がある場面が確認できます。
AI動画広告の品質については下のような事例もあります。
スポットバイトルの生成AI動画を制作したaicrewは、制作上の最大の課題としてAIっぽさの排除を挙げています。同社は約5秒の生成動画をそのまま使うのではなく、自然な2〜3秒程度の部分を選び、つなぎ合わせることで違和感を減らしたと説明しています。
この事例からも、現時点では生成された動画の中から自然に見える部分を選び、編集して仕上げる作業も重要だと分かります。
著作権や商用利用条件の確認が必要
AI動画広告の利用にあたって、まず、著作権についての確認が必要になります。
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」では、 AI生成物についても、既存の著作物との類似性や依拠性などによって 著作権侵害が成立し得ると整理されています。 また、生成時点で問題がなくても、インターネット公開などの利用段階では 別途侵害の有無を検討する必要があるとされています。
広告では企業ロゴ、商品、キャラクターなども扱うため、著作権に加えて肖像、商標、各AIサービスの商用利用条件なども確認する必要があります。
特に、利用するAIモデルによって商用利用条件が異なるサービスもあります。
Adobeは、自社のFirefly Video Modelで生成したコンテンツについては 商用利用可能と説明しています。 一方、Firefly内で利用できるVeoやRunwayなどのパートナーモデルは Adobeが開発したモデルではなく、利用するモデルに応じた条件の確認が必要です。
AI利用の表示ルールも変化している
AI生成広告の透明性を求める動きは、広告プラットフォーム側でも進んでいます。下にGoogleとMetaの例を挙げます。
Googleは2026年7月から、AIで生成・編集された広告アセットについて、 広告主がAI利用を開示できる「AIラベル設定」を段階的に導入しました。
Metaも2026年6月、第三者のAIツールで作成・編集された広告について、 業界標準のシグナルを検出して「AI info」を表示する仕組みの展開を開始しました。
このように、広告を海外に配信する場合は特に、利用する媒体と配信地域の最新ルールを確認する必要があると言えそうです。
主要なAI動画広告ツール
2026年現在、AI動画広告を制作できるサービスは数多く登場しています。
そのため、ここでは代表的なサービスと料金のみを紹介します。各サービスの細かな違いについては、別の記事で詳しく解説します。
| サービス | 無料プラン | 基本料金 | 公式サイト |
|---|---|---|---|
| Creatify | ○ | $39/月〜 | Creatify公式↗ |
| Arcads | × | $110/月〜 | Arcads公式↗ |
| HeyGen | ○ | $29/月〜 | HeyGen公式↗ |
| Topview | ○ | $29/月〜 | Topview公式↗ |
| Pippit | ○ | $20/月〜 | Pippit公式↗ |
| Captions | ○ | $24.99/月〜 | Captions公式↗ |
| JoggAI | ○ | $29/月〜 | JoggAI公式↗ |
| AdCreative.ai | 7日間無料体験 | $39/月〜 | AdCreative.ai公式↗ |
| Predis.ai | 7日間無料体験 | $32/月〜 | Predis.ai公式↗ |
| Omneky | 7日間無料体験 | $29/月〜 | Omneky公式↗ |
※料金・プラン情報は2026年8月時点。各社公式サイトおよび料金画面を確認しています。料金体系やキャンペーン、地域などにより変更される場合があります。
全体を通して、無料プランが存在しているものが多くあったため、まずはそちらを試してみるのが良いでしょう。
まとめ
AI動画広告は、動画生成AIを土台として、広告生成に関わる一連のプロセスを自動化することを目的としたツールです。
国内の動画広告市場が拡大していることや、日本企業でも広告制作への生成AI導入が始まっていることから、AI動画広告は今後さらに普及していく可能性があります。
まずは、上の表を参考に無料プランを試してみると、理解が進むと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今後Occhii Labでは、Creatify、Arcads、HeyGenなどのAI動画広告ツールについて個別に調査していきます。
参考・出典
- Amazon Ads「AI動画生成ツール:AIで動画広告を作成する方法」
- 電通「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」
- サイバーエージェント「生成AIで動画広告の低価格・短納期・高品質を実現する専門組織『日本一のAI動画を追求するセンター』を設立」
- Toys“R”Us / PR Newswire「Toys“R”Us Studios and Native Foreign Use OpenAI’s Sora」
- Creatify「Create Video from URL」
- Creatify「What is Creatify 4.0」
- Septeni FOCUS「スポットバイトルの生成AI動画で切り拓いた新戦略」
- 文化庁「AIと著作権について」
- Adobe Firefly「動画生成AI」
- Adobe「アドビ製品におけるパートナーモデル」
- Google 広告「AIラベルに関する要件の更新(2026年7月)」
- Meta「Expanding GenAI Transparency for Meta’s Ads Products」